中学受験において、最近よく耳にするのが「思考力が大切です」という言葉です。
学校説明会でも、塾の案内でも、模試の結果にも、「思考力を問う問題」「思考力を育てましょう」と書かれていることが増えました。
ただ、この“思考力”という言葉、実はとてもあいまいで、
保護者の方からも「一体、何を身につけさせればいいの?」というご相談をよく受けます。
今日は、中学受験における「思考力」とは何なのか、そしてその力をどう育てていくのかについてお伝えします。
■ 「ゼロから考える力」ではない
思考力と聞くと、「新しい発想ができる力」や「自分の頭で一から考え出す力」といったイメージを持たれることがあります。
確かに、大学入試や社会に出てからは、そうした創造的な思考が求められる場面もあります。
しかし、中学受験で求められる“思考力”は、決して「ゼロから何かを作る力」ではありません。
むしろ、「自分が知っていることの中から、どれを使うべきかを見つけ出す力」
そして、「今まで習った解き方や考え方を使って、なんとか正解にたどり着こうとする力」が中心です。
■ 「知らない問題」=「初めて解くように見える問題」
中学受験の算数では、パターン通りに解ける問題ばかりではありません。
一見すると、「こんなの見たことない!」という問題もあります。
ですが、本当に“初めての問題”というのは滅多にありません。
たとえば、過去に習った「差集め算」や「割合」「速さ」「場合の数」など、
既に学んだ要素の組み合わせでできている問題がほとんどです。
そこで必要になるのが、
-
この問題の中に、自分が知っているパーツはどこにあるか
-
似たような解き方をやったことがなかったか
-
今ある知識の“使い方”を柔軟に考えられるか
という、「持っている知識の応用力」です。
■ 書き出して考える──思考力の出発点
中学受験の算数で最も大切な習慣のひとつが、**「書き出して考えること」**です。
とにかく書いてみる。図にしてみる。表にしてみる。
整理しながら問題の構造を自分の手で“見える化”していく。
このプロセスを通して、子どもたちは「何がわかっていて、何がわからないのか」を整理する力をつけていきます。
逆に、「なんとなく考えて、なんとなく解けそうだったから…」という子ほど、途中でつまずきやすくなります。
思考力の正体とは、**“頭の中で考えることを、手を動かして形にする力”**なのです。
■ 思考力は、知識の上にしか育たない
ここまで読んでいただいてお気づきかもしれませんが、
思考力というのは、「知識があってこそ」育つものです。
知っていることが少なければ、使える道具も少ない。
つまり、「考えようにも、考える材料が足りない」という状態になります。
ですから、思考力を育てる前提として、まずは知識のインプット=基礎の定着が必要不可欠です。
-
計算練習をおろそかにしない
-
覚えるべき語句・公式・表現をしっかり覚える
-
基本問題を自力で正確に解けるようにする
こうした「土台」があるからこそ、
その上に「思考」という作業が積み上がるのです。
■ おわりに
中学受験における思考力は、
決して“ひらめき”や“才能”ではありません。
-
習った知識のどこが使えるかを見つける力
-
自分の頭で考えて、書きながら整理する力
-
解けない問題にも、じっくり向き合う姿勢
こうした力の積み重ねこそが、受験における「思考力」の正体です。
そしてその出発点は、
「書き出すこと」から始まります。
夏に向けて、基本を繰り返しながら、
少しずつ“考える力”を育てていきましょう。


